記事提供:㈱日辰電機製作所 2014.3.31 |
●誘導雷の発生(おさらい) |
前々回のお話で、誘導雷が電気製品を壊す悪者になっていますが、ここでもう一度なぜ誘導雷なるものが発生するのかを簡単にご説明しましょう。 目には見えませんが、この空間には電磁界と言うものがあって、この電磁界というのは、磁石のNとSが引っ張り合っているときには目には見えない、磁界というのがあるのと同じです。 普通、雷がないときは、この電磁界は動きが無くて安定しているのですが、雷が落ちると落ちた周辺の電磁界は急激に変化して、その近くにあった電線には、高い電圧が誘起されるのです。これが誘導雷サージです。 これはある意味では、発電機の原理ににているところがあります。難しい言葉では、「電磁誘導作用」などといっています。 |
●誘導雷はどこから入ってくるのか? |
誘導雷、即ち雷サージは電線を伝わって、家の中に侵入してくるのですが、それだけではなく、家の周りを見渡すと、雷サージが入ってくる経路というのは他にもいろいろとあります。家の周りにはいろいろな電線が張ってあり、電話線はもちろん、電灯線・テレビのアンテナ・インターホン・いろいろなアース、それらはみんな誘導雷の入り口になりうるということなのです。 進入経路のなかでも、電柱からきている電灯線、これは、雷サージが最も入りやすい入り口のひとつです。そして、もうひとつの進入経路が電話線です。電灯線と同じように、電話線も電柱に張ってあり、誘導雷が起きやすく、ここも雷サージが入りやすい経路のひとつです。そして、アースが進入経路にもなると言うこと。これはなぜ?と思われるかも知れませんがアースは、もともと大地即ち地面に埋め込んであるものですが、この地面も実は電気を通すもので、雷の電気が他の所のアースを通って地面に流れると、地面を通って、他のアースからこちらのアースに流れ込むことがあるのです。専門的には「地電位の上昇」などという難しい言葉を使っています。 そして、テレビアンテナはご存じのように、屋根の上などに載せて、テレビ電波をつかまえていますが、これも電線と同じように、空間に置かれた金属としてみると、先ほど説明した電磁誘導作用によって、雷が落ちたときに、高い電圧が発生することがあるのです。この電圧がアンテナ線を伝わって、テレビに入り込んで来るというわけです。 アンテナからもわかるように、まず認識しておかなければならないのは、空間にある金属はすべて誘導雷の経路になると言うことです。 |
●黒電話は誘導雷で何故壊れなかったのか? |
ところで以前の黒電話は、雷でこわれることが非常に少なかったのですが、なぜでしょう? 黒電話は電灯線の電気を使わなくても、電話がかけられたのです。即ち黒電話には電話線しかつながってなく、電話線から誘導雷が進入したとしても、雷サージの抜け道が、どこにもないわけです。 電気というのは、必ず+から-につながった道がなければ、流れることができないのです。黒電話はその抜け道が無く、加入者保安器、これは皆さんのお宅の軒下に必ずあると思いますが、電話線に付いている箱のようなものです。これに落ちていくので、電話機は無事だということなのです。 |
●バイパス保安器《バイパスアレスタ法》 |
黒電話が壊れない理由は、外から繋がっている電線がひとつだけなので壊れない。言い換えると、ひとつの機器に電話線と電灯線が一緒につながっている場合、例えば通信線から進入した誘導雷が機器の内部を雷サージの抜け道にして、機器を壊しながらもう一方の電灯線側に抜けていき、機器を壊してしまいます。現代は、殆どの通信機器、電子機器が電灯線と通信線が一緒に接続されているので、このような機器の損傷が起きてしまうことが多くなっています。 そこで、これらの機器を誘導雷の脅威から護るのが、「バイパス保安器(バイパスアレスタ法)」なのです。 図に示すように、バイパス保安器の原理は、通信機器の電源側と、通信側をバイパスするように保安器を接続することによって、一方の電線から雷サージが進入した場合、機器内部に入り込む前に、雷サージをバイパス保安器に回り込むようにして、もう一方の電線のアース側に逃がす方法で機器を防護します。 |
バイパス保安器には、避雷素子として避雷管(GDT)、バリスタ(MOV)などそれぞれの特性を適切に組み合わせて、その相乗効果によって、急峻な雷サージを流すようにしています。避雷素子は、通信線の電圧や電源電圧では放電せず、機器の耐圧以下の電圧で動作するような素子を選定し、それぞれの電線に進入してきた雷サージの異常電圧が機器を破壊してしまう電圧に上がる前に、バイパス保安器内で動作して異常電圧をバイパスさせてしまいます。 |