電力装置の底力

(1) 電気はあって当たり前?

記事提供:㈱中央製作所
2014.6.30
 ●電気はお金
  電気料金の話ではありません。今の銀行は資産をすべて現金や金塊で持っているわけではありません。データとしてサーバーやストレージに持っているだけです。また2013年現在、日本最大のオンラインショッピングモールは楽天市場ですが、楽天の2012年の国内EC流通総額が約1兆4 ,465億円とのことです。1時間当たりにしますと1億6513万円になります。
  楽天は2013年5月から、大部分のサービスを支える新データセンターを新たに稼働させました。新データセンターでは、集中型のアーキテクチャーへ変更することにより機器の台数を大幅に減らし、今まで増設を繰り返して1000台規模に膨れ上がっていたスイッチが100台程度に、サーバーの台数も数分の1になったとのことです。サーバー1台でよりたくさんのお金を扱っていることになります。これらはもちろんすべて電気で動いています。想像してみてください。停電や短絡事故などでICT装置の一部でも停止したら、機会損失は一体いくらになるでしょう。また電気が切れて、銀行で預金データが消えたらどうなってしまうのでしょう。どこかのお役所のようにデータの行方がわからなくなってしまいましたとは言えません。
   
●停電
  皆さんは最近停電に遭遇しましたか?弊社は宮城県にありますので、東日本大震災で久しぶりに経験しました。復電した時は、本当に電気のありがたみを実感しました。
  昔は家庭の電気容量も少なく、電熱器、電気炊飯器などを使っているところに冷蔵庫がポンと入ったら、台所が真っ暗なんてことが頻繁にありました。この場合、電気を使いすぎているわけですから電熱器を止めて、台所用の子ブレーカを入れなおせばOKです。さらにショート(短絡)事故を起こしたりすると親の漏電ブレーカも落ちて家中真っ暗ということになります。
  この事象を難しくいうと、ブレーカの定格電流を超える過電流が流れて遮断したということになります。ブレーカには図1のような動作特性というものがあり、たくさん電流が流れるほど速く遮断します。
 
  また子のブレーカだけが落ちる事を選択遮断、親と子が同時に落ちる事をカスケード遮断といいます。図2のように動作特性を青い線のように交差しないように、親と子のブレーカを選定すると高い電流値まで選択遮断の領域が増えます。赤の破線のように交差させてしまいますと低い電流で親と子の両方のブレーカが落ちてしまいます。
  ブレーカ選定のもう一つ大きな要素として、定格遮断容量というどのくらい大きな電流まで壊れずに遮断することが出来るかというものがあります。選択遮断、カスケード遮断何れもブレーカが壊れないように選定するのは当然ですが、使い分けとしてはカスケード遮断のほうが親と子が協力して遮断する分、性能の低い安価なブレーカを使用することが出来ます。
  弊社のデータセンター用の分電盤は、多いもので1台当たり84個のブレーカを搭載しています。これらのブレーカはラックに電源を供給し、ラックには複数のサーバーやスイッチが収納されます。ここで最初の楽天の話を思い出してください。もしも短絡事故を起こしてラックへの電源供給が絶たれたら、どのような被害額になるのでしょうか? ましてカスケード遮断になってしまったら、分電盤1台84個のブレーカからの電源供給が絶たれることになります。
  電気はあって当たり前です。弊社では、選択遮断を十分に考慮した分電盤をご提供しております。
 
●分電盤の役割
  分電というくらいですから電気を分配するわけですが、最も重要な役割は、電気を安全に遮断して事故を最小限に抑えることです。装置側に最も近い分電盤を含めた発電所に至るまでのすべて配電盤は、そういった思想で製造されています。上位と下位の盤のブレーカ間で確実に遮断できるようにすることを、保護協調をとるといいますが、これがうまくできていないとこんなことになってしまうという動画がYouTubeなどで見ることが出来ます。「電気事故」などで検索しますと以下のようなものが発見できます。
  https://www.youtube.com/watch?v=BrC7NQeG4GU
  電気はあるだけじゃなく、安全に扱われて当たり前なのです。

  次回は「電気は見張っていないと増え続ける」というタイトルで電力の見える化についてご紹介します。
 

 

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